子宮蓄膿症
概要
子宮蓄膿症は、発情後のホルモン変化を背景に子宮内に細菌が繁殖し、膿がたまる病気です。未避妊の中~高齢(目安:6–10歳以降)のメスで多く、放置すると敗血症や腎障害、DICなど命に関わる緊急疾患です。
子宮頸管が開いて膿が外に出る開放型と、外に出ない閉鎖型があり、閉鎖型は気づきにくく急速に悪化することがあります。
こんな症状は要注意
- 陰部から膿状・血膿状の分泌物(タオルや床が汚れる)
- 水をよく飲む・おしっこが多い(多飲多尿)
- 元気・食欲の低下、発熱、嘔吐、腹部の張り
- 陰部をしきりに舐める、落ち着かない
- 発情(ヒート)後1~2か月以内に上記が出る
上記が当てはまる場合は当日中の受診をおすすめします。
原因・しくみ
発情後に黄体ホルモン(プロゲステロン)が高い状態が続くと、子宮内膜が分泌過多になり、細菌(大腸菌など)が繁殖しやすい環境になります。免疫応答も低下し、膿がたまります。
検査
- 身体検査・体温・粘膜色・脱水評価
- 膣スメア検査:感染状態を評価
- 超音波検査:拡張した子宮・内容物の確認
- レントゲン検査:拡張子宮のシルエット、合併症の確認
- 血液検査:白血球増多、炎症反応、電解質/腎数値評価
- 尿検査、培養(必要に応じて)
治療
基本方針(推奨)
外科治療(卵巣子宮摘出術:いわゆる避妊手術と同様の切除)が第一選択です。
- 手術前に点滴、抗菌薬、鎮痛、循環・電解質補正などで全身状態を整えます。
- 手術で感染源を取り除くことで再発を防ぎ、救命率が高まります。
<手術画像>
<摘出した子宮>
<子宮内に貯留した膿>
内科的治療(限定的)
繁殖計画がありどうしても温存したい場合などに、子宮収縮薬(PGF2α等)や抗菌薬で対応する選択肢もありますが、再発率が高く、リスク(子宮破裂・敗血症)があるため一般的には推奨されません。
入院と術後の流れ(目安)
- 状態により数日間の入院で点滴・抗菌薬・疼痛管理
- 退院後は内服薬と安静、術後チェック(抜糸または術創確認)を行います
- 重症度や合併症によって期間は前後します
<手術後>
予後
早期に手術できれば多くは良好です。受診が遅れ、敗血症・腎障害・DICを伴う場合は重篤化します。気づいたらすぐ受診が重要です。
予防
避妊手術(卵巣子宮摘出術)で確実に予防できます。
初回発情前~若齢期の実施が望ましく、乳腺疾患の予防効果も期待できます。時期やメリット・デメリットは個別にご説明します。
当院でできること
- 超音波・レントゲン・血液検査を即日実施
- 状態に応じた緊急対応・入院管理
- 外科手術(卵巣子宮摘出術)と術後ケア
- 症状の重さに応じて同日手術の可否を都度判断します(まずはお電話またはWeb予約でご連絡ください)
よくある質問(FAQ)
子宮蓄膿症の初期サインの一つです。当日受診をおすすめします。
安心ではありません。開放型でも全身感染のリスクがあり、緊急の手術が必要です。
原因臓器が残るため再発や重篤化のリスクが高く、基本は外科治療が最適です。
体重や重症度、入院日数で変動します。検査後に個別お見積りをご提示します。
年齢・発情状況・既往により異なります。診察時に最適な時期をご提案します。
受診の目安(チェックリスト)
一つでも当てはまれば当日受診をお勧めします。
- 陰部からの分泌物/血膿
- 多飲多尿
- 元気・食欲低下
- 発熱・嘔吐・腹部膨満